あの名曲も? VangelisからDuran Duranまで、「Roland S-50」を愛した世界のトッププロたち

1986年に登場し、サンプラーの民主化を推し進めた「Roland S-50」。価格を抑えながらもプロ仕様のスペックを持っていたこのマシンは、アマチュアだけでなく、すでに何千万円もの高級機を所有していたはずの世界的なトッププロたちをも魅了していきました。

「手軽で、楽器として使いやすく、そして音が太い」

今回は、当時このRoland S-50を愛用していることを公表し、実際の楽曲やステージでそのポテンシャルを極限まで引き出していたレジェンドミュージシャンたちをご紹介したいと思います。

1. 映画音楽の巨匠:Vangelis(ヴァンゲリス)

映画『ブレードランナー』や『炎のランナー』の音楽で知られる、世界的シンセサイザー奏者のヴァンゲリス。彼は無類のローランド・ファンとしても知られていますが、サンプラー激動の時代にこのS-50(およびラック版のS-550)を自身の巨大なシンセサイザー・システムに組み込んでいました。

ヴァンゲリスといえば、何層にも重ねられた重厚で壮大なオーケストラ・サウンドが特徴です。S-50の持つ「16音ポリフォニー」という豊かな発音数と、ベロシティによる表現力は、彼のダイナミックな演奏スタイルに完璧にマッチしていました。

数々のシンセを操る巨匠の耳にも、S-50の12bitサウンドは「オーケストラの質感を表現するのに十分な太さがある」と認められていた証拠です。

2. 80年代ポップスの王者:Duran Duran(デュラン・デュラン)

1980年代のニュー・ロマンティック・ムーブメントを牽引し、世界中を熱狂させたデュラン・デュラン。そのサウンドの要であるキーボーディストのニック・ローズも、S-50のユーザーでした。

彼らの洗練されたきらびやかなポップ・ミュージックにおいて、サンプリング音をいかに素早く、効果的に楽曲に組み込めるかは最重要課題でした。

S-50は、スタジオでの緻密な音作りだけでなく、ワールドツアーなどの過酷なライブ環境にも耐えうる「信頼性の高い国産楽器」として、彼らのステージを支えていたのです。

3. ドイツ電子音楽の皇帝:Klaus Schulze(クラウス・シュルツェ)

タンジェリン・ドリームの初期メンバーであり、ソロとしてもシンセサイザー・ミュージック(プログレッシブ・ロックや環境音楽)の地平を切り開いたクラウス・シュルツェ。彼の膨大な機材リスト(ラックの山!)の中にも、はっきりと「Roland S-50」の名前が刻まれています。

彼は音のループや変調を繰り返す深い音響世界を作っていましたが、S-50の「外部モニターを見ながら波形を視覚的にエディットできる機能」は、こうした実験的な音作りを行うプロにとって、作業効率を劇的に高める神機能だったと言われています。

4. 日本のフュージョン・ジャズ界の職人:野力奏一

日本国内でも、山下達郎さんのサポートや、名門フュージョンバンドで活躍したピアニスト・キーボーディストの野力奏一さんが、当時のライブやレコーディングでS-50を多用していました。

名盤として名高いスクウェア(THE SQUARE)周辺のセッションや自身のアルバムなどで、YAMAHA DX7IIやRoland D-50と並べてS-50を使用。特に「ビブラフォン(鉄琴)」の音などをS-50のサンプリング音で激しく、そして美しくソロ演奏し、当時のシンセサイザー専門誌などでも話題を呼びました。

一線級のジャズ・ピアニストが、タッチ(ベロシティ)の表現力に納得して使っていたという事実が、S-50の楽器としての完成度の高さを物語っています。

まとめ:プロが惚れた「12bitの音楽的な響き」

これほどの巨匠たちが、より高価な選択肢もある中であえてRoland S-50を選んだ理由。それは単に「安いから」ではなく、「楽器として優れており、何より出てくる音が“音楽的”だったから」に他なりません。

現在の最新のソフト音源はバグもなく完璧ですが、当時のプロたちがS-50の鍵盤を叩いて「おお、これは使える!」と目を輝かせたあの熱気は、今もこの実機の中に息づいています。

そんな歴史的な名機を今も所有し、その音に酔いしれることができるのは、本当に贅沢でロマンのあることだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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