【名盤ストーリー】静寂と幻想の美学|Evi Vine『…and so the morning comes』の音作りとミステリアスな魅力に迫る

音楽

こんにちは。ネット上をいろいろ巡っていて、ふと聴こえてきたメロディーや世界観に心を奪われてしまうことが多々あるユウキです。今日はそんなきっかけから始まったお話しをしたいと思います。

何気なくネットを見ていて、ムードのある幻想的な曲に出逢い、そのあまりの美しさに衝動を抑えきれず、はじめて「Bandcamp」を使って海外からCDを購入したという、とても思い出深い一枚でもあります。

そんな経緯で、今回ご紹介するのは、イギリスのシンガーソングライター Evi Vine(エヴィ・ヴァイン) が2011年に発表した名作デビューアルバム『…and so the morning comes』です。

名作デビューアルバム『…and so the morning comes』

偶然の出逢いと、心を掴まれた3つの名曲

はじめて耳にしたとき、奇をてらわないシンプルさと、聴き込むほどにじわじわと魅力が膨らんでいく感覚に深く引き込まれました。

  • 「How Time Flies」 耳にした瞬間、キラキラとした優しい音像とつぶやくような歌声に一目惚れ(一聴惚れ?)してしまいました。キャッチーで覚えやすい構成でありながら、時間の流れを愛おしむような切なさが漂う名曲です。
  • 「In This Moment」 静寂の中からじわじわと感情が立ち上がってくるような、息をのむ美しさを持ったトラック。タイトル通り「今、この瞬間」に引き戻されるような不思議な臨場感があります。
  • 「Inside Her」 重なり合う陰影と浮遊感が実に幻想的で、深い余韻を残してくれます。

どの楽曲も主張しすぎないのに、気がつくと頭から離れなくなり、「これはどうしても手元にCDで持っておきたい…!」と思わせてくれる力を持っていました。

空間を支配する音作り——アンビエントとハードウェア・エフェクトの融合

Evi Vineの音楽を語る上で欠かせないのが、絶妙な「アンビエント要素の加減」です。アンビエントに寄りすぎて歌が埋もれてしまうこともなく、かといって歌モノになりすぎない、絶妙な加減で成り立っています。

この幻想的なサウンドスケープは、パートナーであるSteven Longとともに構築されています。

エセリアル・シューゲイザー系を支える名機たち

あの深く広がる音像の正体は、ギタリストたちが足元に置く「空間系エフェクター(ディレイ・リバーブ)」の組み合わせによるものです。

  1. Strymon BigSky(リバーブ) エセリアル・シューゲイザー系の「神機」と称されるペダルです。特に「Cloud」や高音が美しく残響する「Shimmer」モードは、ギターの1音を弾くだけでまるでパイプオルガンやシンセパッドが広がっていくような、天上的な空間を作り出してくれます。
  2. Strymon Timeline / El Capistan(ディレイ) Timelineは多様な残響を制御できる高機能ディレイ。一方El Capistanは、昔ながらのテープエコーの揺らぎ(Tape Echo)を再現したペダルで、音の尾ひれが優しく掠れていくようなアナログ特有の温かみと哀愁をプラスしてくれます。
  3. Walrus Audio Slö / Eventide Space 夢の中にいるような浮遊感を作るWalrus Audio Slöや、空間が歪んで吸い込まれていくような「Blackhole」アルゴリズムを持つEventide Spaceなど、ダークで幻想的な世界観を作る名機が数多く活躍しています。
  4. BOSS RV-6 / DD-8(定番コンパクト) 澄み切ったShimmerモードを持つRV-6や、音を美しく重ねて空間を埋めるDD-8など、コンパクトでありながら信頼のおける定番モデルも欠かせません。

「音と余韻」が作る魔法のロジック

これらのエフェクターを組み合わせる際、「ディレイの音をリバーブの雲(Cloud)の中に溶かし込む」セッティングがよく使われます。

原音(ギター本来の音)の後ろで細かく刻んだディレイ音が、リバーブによって大きな音の波となり、ゆっくりと消えていく……。この「残響のテール(尻尾)の引き方」こそが、Evi Vineの楽曲全体を包み込む「深夜から朝へと向かう静けさ」を演出している正体なのです。

深夜から朝へ——静けさが光を連れてくる時間軸の表現

アルバムタイトル『…and so the morning comes(そして朝が訪れる)』が示す通り、この作品には全編を通して「深夜の漆黒から、うっすらと東の空が白んでいくグラデーション」のような時間軸が流れています。

暗闇の中にぽつんと一人でいるような孤独感から始まり、曲が進むにつれてかすかな光やぬくもりが差し込んでくる——。

このストーリー性と世界観の表現力は本当に見事です。一人で静かに過ごしたい深夜や、まだ街が動き出す前の早朝に聴くと、心にスーッと溶け込んでいくのが感じられます。

ミステリアスなヴェールに包まれたEvi Vineという存在

Evi Vineは、大手レーベルのド派手なプロモーションとは距離を置き、自らの美学を貫くインディペンデントなスタイルを大切にしています。

メディアへの露出も限られており、多くを語らないミステリアスな佇まいも彼女の魅力の一つです。しかしその一方で、The CureのSimon Gallup(ベース)やThe MissionのWayne Husseyといったレジェンドたちとコラボレーションを果たしており、同業者やミュージシャンから熱狂的に愛される「ミュージシャンズ・ミュージシャン」としても知られています。

商業主義に流されず、自分たちの信じる静寂と美を追求し続ける姿勢が、あの唯一無二の歌声と佇まいに繋がっているのかもしれません。

こんな音楽が好きな方に心からおすすめ

もしあなたが以下のようなアーティストを好んで聴かれているなら、Evi Vineの音世界には間違いなくハマってしまうはずです。

  • Mazzy Star(Hope Sandovalの持つ、儚くも乾いたウィスパーボイスとノスタルジー)
  • Portishead(トリップホップの持つ静かな緊張感とノワールな空気感)
  • Cocteau TwinsLow(エセリアル・ウェーブやスロウコアの美しい残響美)

【まとめ】手元に置いておきたくなる、一生モノの音楽体験

ネットでふと出逢った楽曲から始まり、気づけばBandcampで海外からCDを取り寄せるほど夢中になっていた『…and so the morning comes』。

デジタルで手軽に聴ける時代だからこそ、物理的なCDを手に入れた時のあの誇らしいような嬉しい気持ちは、今でも色あせません。

慌ただしい日常から少し離れたい時、静かな夜のお供に、ぜひEvi Vineの音世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

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