鼻歌にコード(CやGなど)をつけられるようになり、曲が作れるようになって楽しめると、今度は次の段階へ。成長のあかしのように、自分の曲が理想とは違う感じがしたり、何か物足りない気がしてくるかと思います。
「なんだか曲がシンプルすぎる…」「J-POPや洋楽みたいな、ちょっとノスタルジックでおしゃれな雰囲気にしたい。」そんな風に感じてくるかもしれません。
そんな時は、基本の3和音(メジャー・マイナー)に「ほんの少し音を足したり変えたりするだけ」で、曲の表情はガラリと変えることができます。
今回は、あのビートルズの数々の名曲でも大活躍している「コードのちょい足しアレンジ術」を3つご紹介します。 DTM初心者の方も、ぜひ手元のキーボードやギターで音を鳴らしながら試してみてください。
アレンジ術①「7th(セブンス)」で一気にエモさと切なさをプラス
最初に試してほしいのが「7th(セブンス)」というコードです。基本の3和音に「7番目の音」をひとつ足すだけのテクニックなのですが、これが驚くほど効果的なのです。
なぜ7thを足すと「エモく」なるの?
普通の「C(ドミソ)」はすっきりとしていて安定感がありますが、そこに「シ」の1音を加えて「Cmaj7(ドミソシ)」にすると、急におしゃれで切ない、都会的な響きに変わります。
ジャズやシティポップ、そしてビートルズの楽曲でも、この「ちょっと切ないエモさ」を出すために7thが大量に使われています。
ビートルズの例:『Let It Be』や『Yesterday』
ビートルズの名曲『Yesterday』のサビや『Let It Be』のフレーズを聴いてみると、単なる明るい・暗いだけではない、どこか胸がキュッとなるようなノスタルジックな響きが感じられますよね。
あの「哀愁」や「物語が始まるような空気感」を作り出している正体こそが、この7thコードなのです。
使い方のコツ:
曲の出だしや、AメロからBメロへ切り替わるタイミングで基本のコードを「7th」に変えてみましょう。一気に楽曲のストーリー性がアップしますよ。
▼ 実際に弾いてみよう!『Let It Be』風進行(4小節)
C ➔ G ➔ Am7 ➔ Fmaj7
※基本の「Am」を「Am7」に、「F」を「Fmaj7(メジャーセブンス)」に変えています。最後の「Fmaj7」が鳴った瞬間の、フワッと広がる切ない響きに注目してみてください!

【コラム】日本のフォーク界を激震させた「7th」の衝撃
実は日本でも、この「7th(特にメジャーセブンス)」が音楽シーンの歴史を大きく変えた有名な出来事があります。
1970年代半ば、日本の音楽界はアコースティックギターで弾くシンプルなフォークソング(3和音が中心)が全盛期でした。そこへ彗星のごとく登場したのが、山下達郎さんが率いるバンド「シュガー・ベイブ」です。
彼らが鳴らした「7th」を多用した洗練されたサウンドに、当時のフォークミュージシャンたちは「なんだこのおしゃれなコードは!?」「押さえ方が複雑すぎて音が響かない!」と大衝撃を受けたと言われています。
今でこそ親しまれている都会的なJ-POPやシティポップの響きも、当時は音楽シーンを揺るがすほどの「魔法のコード」だったのですね。

アレンジ術②「sus4(サスフォー)」でサビ前にワクワク感(じらし)を作る
2つ目の魔法は「sus4(サスフォー)」です。名前は少し難しそうに見えますが、仕組みはとてもシンプルです。
「お預け」を食らわせるじらしのテクニック
sus4は、コードの真ん中の音(3度)を「半音上の音(4度)」に一時的に引っ張り上げたコードです。
音が浮いているような、独特の「うずうずする感じ」や「お預け感」が生まれます。
そして、その後に普通のコードへ戻してあげると、「あぁ、スッキリした!」という気持ちよさが生まれるのです。
- 定番の流れ:
Dsus4➔D
ビートルズの例:『A Hard Day’s Night』
ビートルズの映画のオープニングでも有名な『A Hard Day’s Night』のサビ前などで、この効果的な「じらし」を聴くことができます。
サビに向けてグッと気持ちを高めたいとき、直前にこの「sus4」を挟むことで、「来るぞ、来るぞ…来たー!」というワクワク感を演出することができるのです。
使い方のコツ:
サビに入る直前のコードや、曲の展開が変わるポイントで「sus4 ➔ 普通のコード」の流れを入れてみてください。
▼ 実際に弾いてみよう!サビ前『じらし』進行(4小節)
G ➔ C ➔ Dsus4 ➔ D
※いきなり「D」に行かずに一瞬「Dsus4」を挟むことで、コードが解決(Dに着地)したときの爽快感が倍増します!

アレンジ術③「分数コード(オンコード)」でベースの流れを滑らかに
最後にご紹介するのが「分数コード(オンコード)」です。楽譜では C/G や C on G と書かれます。
「上のパートの和音はCだけど、一番低いベース音だけ(本来Cのところ)Gを弾いてね」という意味なのですが、これを使うと曲のドラマチックさが段違いになります。
カクカクしたベースラインとおさらば♪
普通にコードを打っていくと、ベースの音が「ド!➔ ソ!➔ ラ!」とあちこちにジャンプしてカクカクした印象になりがちです。
そこで分数コードを使い、ベース音だけを「ド ➔ シ ➔ ラ ➔ ソ」と階段を下りるように滑らかにつないであげます(これをクリシェと呼びます)。

ビートルズの例:『Something』や『Lucy in the Sky with Diamonds』
名曲『Something』のイントロやAメロを思い出してみてください。
コードの響きは美しく移り変わりながらも、下で鳴っているベースラインが実に滑らかに、流れるように変化していきます。
洋楽特有の「高級感」や「ドラマチックな展開」は、このベースラインの滑らかさから生まれていることが多いのです。
使い方のコツ:
まずは「ベース音だけを半音ずつ下げる(または上げる)」アレンジから試してみるのがおすすめです!
▼ 実際に弾いてみよう!ベース滑らか下降進行(4小節)
C ➔ Cmaj7 ➔ C7 ➔ F
(ベース音を意識して見ると:C ➔ C/B ➔ C/Bb ➔ F/A)
※コード全体の音を鳴らしつつ、一番低いベースの音だけが「ド ➔ シ ➔ シ♭ ➔ ラ」と滑らかに下がっていくドラマチックさを体感してみてください。
まとめ:お気に入りの「ちょい足し」から試してみよう♪
今回は、曲の雰囲気を一変させる3つの魔法テクニックをご紹介しました。
- 7th(セブンス): 1音足して切なさ・エモさをプラス!
- sus4(サスフォー): サビ前のワクワク感(じらし)を作る!
- 分数コード: ベースラインを滑らかにしてドラマチックに!
一気に全部使おうとする必要はありません。ビートルズのメンバーたちも、きっと「この音を足したら気持ちいいかも!」という発見を楽しみながら名曲を作っていたはずです。
まずはご自身の曲のどこか一箇所、お気に入りの「ちょい足し」から試してみてください。
