登場前とその後♪BOSSコンパクトエフェクター誕生秘話!なぜあの「小さな箱型」が世界基準になったのか?

楽器について

ギターを始めたばかりの頃、誰もが一度は手に取る黄色や赤、緑の小さな箱型エフェクター。そうですBOSSのコンパクトペダルのエフェクターですね。

例えば、世界中で愛用されるロングセラーのディストーション(DS-1)をはじめ、温かいオーバードライブサウンド(SD-1)、音作りを自由自在に補正してくれるイコライザー(GE-7)など、「気づけばいつも足元にあって、自分を助けてくれている」というギタリストも多いのではないでしょうか。

今でこそ当たり前のようにスタジオやライブハウスで見かけるBOSSのエフェクターですが、実はそれらが登場する前の時代、ギタリストの足元はまさに「トラブルとの戦い」。使いやすさの点では、改善できる課題がまだあったようです。

なぜBOSSのペダルは世界中のミュージシャンに愛され、40年以上経った今も「足元の世界基準」として君臨し続けているのでしょうか?

今回は、BOSS登場以前のエフェクター事情と、音楽の歴史を塗り替えた革新的な開発エピソードをみていきたいと思います。

BOSS登場以前の「エフェクター暗黒時代」とは?

BOSSがコンパクトペダル第1号(OD-1など)を発売した1977年より前、エフェクターはまだ「一部のプロやマニアが使う特別な機材」でした。当時のギタリストたちは、以下のような悩みを抱えながら演奏していたと言われています。

① スイッチが硬くて痛い!踏み外すトラブルの連発

当時のエフェクター(ファズや初期のディストーションなど)は、金属の細い突起スイッチ(メタルスイッチ)が剥き出しになっているものが主流でした。 ライブの暗いステージで踏み損ねたり、激しく踏みすぎてスイッチ自体が壊れてしまったりすることも珍しくありませんでした。

ビンテージ風のエフェクター(ファズフェイスなど)をお持ちの方なら分かるかもしれませんが、あの突起状のメタルスイッチ、家で裸足のまま踏むと激痛が走りますよね(笑)。靴で踏む前提なのはわかりますが、当時のギタリストたちも、ライブのたびにあの小さなスイッチと格闘していたと思うと頭が下がります……。

② 電池交換にドライバーが必要だった

当時のエフェクターは、電池を交換するたびに裏蓋のネジをドライバーで外さなければなりませんでした。本番直前に電池が切れたら一両大事です。

③ つないだだけで音が痩せる「音質劣化」

エフェクターをOFFにしていても、シールドを経由することでギター本来のツヤや高音域が失われてしまう「音痩せ」の現象が大きな課題でした。

ギタリストの悩みを一挙に解決した「BOSSの3大発明」

こうしたギタリストの切実な悩みを解決するために、日本の技術者たちが情熱を注いで作り上げたのが、1977年に登場したBOSSのコンパクトペダルシリーズでした。

BOSSが持ち込んだ革新的なアイデアは、大きく分けて3つあります。

① ダイキャストボディと非接触型スイッチ

鉄ではなく頑丈なアルミダイキャストのボディを採用し、ペダル部分全体を大きく「面」で踏める構造にしました。これにより、暗いステージでも踏み外すことがなくなり、激しいステージワークにも耐えられる堅牢さを手に入れました。

また、スイッチの内部構造を工夫することで、「踏んだときのガチッというノイズ」を最小限に抑えることに成功しています。

② 工具不要!ネジひとつで開く手回し電池BOX

ペダル手前の大きなサムスクリュー(手回しネジ)を緩めるだけで、工具を一切使わずにバッテリー交換ができる設計になりました。ライブ現場での「使いやすさ」を第一に考えた、至れり尽くせりの工夫ですね。

③ バッファード・バイパス(シールド対策)と電源供給

エフェクターを複数繋いでも音質が劣化しにくい「バッファー回路」を内蔵。ロングシールドを引き回してもノイズに強く、芯のあるサウンドを維持できるようになりました。

後に登場するパワーサプライ「PSM-5」などによりコンセントからの電気供給が可能に。電池消費の激しい空間系ペダルを使うギタリストの救世主となりました。

4. 伝説の名機たちが作ったロックの音

BOSSのペダルは、色ごとに役割が分かれているのも魅力のひとつですよね。長い歴史の中で生まれた名機たちを少しだけ振り返ってみましょう。

歪みペダルの金字塔「OD-1」と「SD-1」

1977年に登場した名機「OD-1」は、真空管アンプのような滑らかな歪みを作り出す非対称クリッピング回路を搭載していました。その後、トーンコントロールを追加して1981年に誕生したのが、今なお愛され続ける「SD-1(Super OverDrive)」です。

ギターの原音を活かした温かいサウンドは、マーシャルアンプのブースターとしても大定番となりました。

サウンド補正の要「GE-7」

音作りの追い込みや、ソロの時の音量アップ(ブースト)に欠かせない「GE-7(Graphic Equalizer)」。特定の周波数をピンポイントで持ち上げたり削ったりできるため、「あと少し抜けを良くしたい」という時の救世主として、プロの足元にも必ずと言っていいほど組み込まれています。

BOSS設立のきっかけと「意外な1号機」

BOSSは1973年、ローランド(Roland)の子会社として設立。実は、最初からあのコンパクトエフェクターを作っていたわけではありませんでした。

BOSSブランドとして一番最初に作られた記念すべき第1号機は、なんとギターのボディに取り付けるアンプ内蔵プリアンプ「B-100(1974年)」や、ハンディタイプのプリアンプでした。

そして、エフェクターとしてのBOSS第1号機(1976年)は、コンパクトではなく大きな置型ペダルの「CE-1 Chorus Ensemble」だったのです。

ローランドの伝説的アンプ「JC-120(ジャズコーラス)」に内蔵されていたコーラス回路があまりに高評価だったため、「この音だけを足元で使いたい!」というギタリストの声に応えて単体化したのがCE-1でした。このCE-1の成功が、後の「コンパクトペダルシリーズ」開発への大きな弾みとなったのです。

コンパクトペダル1号機はディストーション?

1977年、いよいよ現在おなじみのカラフルな「コンパクトシリーズ」が誕生します。 「1号機はディストーション?」と思われがちですが、実は1977年に最初の3機種が同時に発売されました。

  • OD-1(Over Drive): 黄色。世界初のオーバードライブ。
  • PH-1(Phaser): 緑色。温かみのあるフェイザー。
  • SP-1(Spectrum): 赤色。ブースター/EQ的なマニアックな機材。

つまり、歪み系としては「ディストーション(DS-1)」ではなく、マイルドで真空管らしい歪みを作る「オーバードライブ(OD-1)」が最初でした。(DS-1は翌年の1978年に登場します。)

まとめ:足元の機材に愛着を持つと、ギターはもっと楽しくなる

今私たちが何気なく踏んでいるBOSSのエフェクター。その一歩には、かつての技術者たちが「ギタリストをトラブルから解放したい」「もっと良い音で演奏してほしい」と試行錯誤した歴史がぎゅっと詰まっているわけですね。

もし次にスタジオでSD-1やイコライザーのスイッチを踏む機会があったら、ぜひその頑丈なボディや踏み心地の良さに少しだけ目を向けてみてください。

長年ギタリストを支え続けてきた背景を知ると、いつもの機材がちょっと誇らしく、愛おしく思えてくるかと思います。

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