最近、ニュースを見るたびに日本をはじめ、世界中で起きている大雨による洪水や、床上・床下浸水の被害を目にすることが増えています。先日も、友達と自宅が無事で安心するという状況にもなりました。
以前と比べても「昔の夏って、こんなに暑かったっけ?」「なんだか雨の降り方が、昔と全然違う気がする…」そう感じている方も多いかと思います。
実はその感覚、気のせいではなく私も同感です。近年では猛暑や豪雨だけでなく、巨大な地震への不安も常に隣り合わせとなっています。
今回は、ひと昔前と今の夏の決定的な違いや、猛暑・豪雨・そして地殻への影響をもたらす環境の変化について紐解いていきます。さらに、私たち音楽家にとって死活問題である「楽器用木材の高騰」という現実にも焦点を当てます。
そして記事の後半では、行動を起こしている先輩ミュージシャンたちの素敵な事例や、私たち音楽を愛する人間が、日々の活動や発信を通じて地球のためにできる「身近な環境アクション」を3つのステップでご紹介します。
大切な楽器や大好きな音楽を楽しめる未来を守るために、できることから一緒に考えてみましょう。
昔の夏と今の夏、何が変わった?(気温上昇と豪雨被害)
例えば、昭和の時代(約50年前)の日本の夏や、私たちが幼い頃を思い返してみてください。
当時の夏といえば、最高気温が30℃前後の「真夏日」が中心で、夜になれば風鈴の音とともに涼しい風が吹き、エアコンがなくても扇風機と網戸だけで過ごせる日がたくさんありました。

夕立がサッと降って、打ち水をして涼む……そんな情景が日常だったのです。
しかし、現代の夏はどうでしょうか。
今や35℃を超える「猛暑日」が連日のように続き、地域によっては40℃に迫るような危険な暑さになることも珍しくありません。熱中症警戒アラートが日課のように発表され、外で遊ぶことすら危険とされる時代になってしまいました。
さらに深刻なのが「雨の降り方」です。
かつての涼をもたらす夕立とは異なり、短時間で爆発的な雨が降る「ゲリラ豪雨」や、同じ場所に強い雨が降り続く「線状降水帯」が頻発しています。
これにより、一瞬で街の側溝や河川から水が溢れ出し、大切な自宅や店舗が床上・床下浸水に見舞われる被害が全国で毎年のように繰り返されているのです。
なぜ、これほどまでに日本の気候は過酷になってしまったのでしょうか。
なぜここまで過酷になったのか?街を襲う「緑化不足」の恐怖
地球温暖化が世界的な問題になっていることは言うまでもありませんが、私たちが暮らす街の環境そのものが変化したことも、この危険な状態を引き起こしている大きな要因です。
① ヒートアイランド現象と街のアスファルト化
1つ目の大きな原因は、都市部を中心に広がった「ヒートアイランド現象」です。
昔に比べて、私たちの身の回りは土や草むらが減り、地表のほとんどがアスファルトやコンクリートで覆われるようになりました。
アスファルトは太陽の光と熱を吸収しやすく、日中に大量の熱を蓄え込んでしまいます。その蓄積された熱が夜間になっても放射され続けるため、夜になっても気温が下がらず「熱帯夜」が続くことになるのです。

さらに、アスファルト化は「水害」にも直結しています。
土や草地であれば、降った雨を自然に吸い込む「蓄水・保水機能」があります。しかし、アスファルトは水を一切吸いません。そのため、短時間に大量の雨が降ると、地中に染み込むことなく一気に道路や側溝、下水道へと流れ込んでしまいます。
その結果、街の排水処理能力をあっという間に超えてしまい、内水氾濫による床上・床下浸水を引き起こしてしまうのです。
② 木々(緑)の減少と気候変動・地震への懸念
2つ目の原因は、街から草木や植物などの「緑」が減ってしまったことです。
木々には、日差しを遮る、木陰からの涼しい風を作るということ以外にも、葉から水分を蒸発させるときに周囲の熱を奪う「蒸散作用」があります。
いわば、木々は自然がくれた天然のクーラーです。街から大きな樹木や森林が減ったことで、この冷却システムが機能しにくくなっています。
また、植物がCO2を吸収する量が減ることで、地球温暖化そのものを加速させる悪呼吸にもつながっています。
さらに、近年科学者たちの間では、地球温暖化による急激な氷河の融解や、集中豪雨による大量の地下水圧の変化、海面上昇などが、断層にストレスを与えて地震のリスクを高める要因になり得るという研究も進められています。
大雨や台風などの自然災害だけでなく、地震という万が一の事態が起きた際にも、豊かな土壌や木々の根は地盤を支え、崩落を防ぐ役割を果たします。

街から緑や土が消え、アスファルトで覆い尽くされることは、あらゆる自然災害に対する防波堤を自ら失っていると言っても過言ではないのです。
音楽家を直撃する「高級木材の枯渇と楽器の高騰」
自然破壊や森林減少の影響は、自然災害の増加だけでなく、実は私たちの「大切な楽器」にも直接的な打撃を与えています。
エボニー(黒檀)、ローズウッド(紫檀)、マホガニー、ハカランダなど、ギターやバイオリン、木管楽器の製作に欠かせない高品質な木材が、世界的な森林伐採や気候変動の影響で年々枯渇しつつあります。
現在ではワシントン条約などの輸出入規制が強化され、手に入りにくくなった結果、「楽器の価格が急激に高騰する」「以前のような上質な木材を使った楽器が生産できなくなる」といった事態が現実起きています。
「地球環境の問題」は、決して遠い世界の話ではありません。自然の恵みである木々が失われることは、私たちが愛する「良い音」や「楽器文化そのもの」が失われていく危機と隣り合わせなのです。

街に「緑」と「保水力」を取り戻すために必要なこと
過酷な暑さや水害のリスク、そして大好きな音楽の未来を守るためには、私たちが再び自然の持つ力を見直す必要があります。
- アスファルトで完全に覆うのではなく、水が染み込む舗装や土の面を残すこと
- 夏場に豊かな木陰をつくってくれる街路樹や公園の緑を増やすこと
こうした「緑化」と「保水機能の回復」を進めていくことが、街の気温を下げ、大雨の際の急激な増水を防ぐカギになります。
自然を大切にし、共生していく視点を持つことが、巡り巡って私たちの暮らしや大好きな音楽環境を守ることにつながっていくのですね。

