「今日は曲を作るぞ」と意気込んで楽器の前に座ったのに、何も浮かばない。ところが、散歩しているときやお風呂に入っているとき、あるいはぼんやりしているときに、突然メロディが浮かんできた。そんな経験はありませんか?
私自身も、曲を作ろうと力を入れているときより、ふと気が抜けているときのほうが「これだ」と思えるフレーズが浮かぶことがあります。
しかも、後から振り返ると「どうやってこのフレーズを思いついたんだろう」と、自分でも不思議に感じることがあります。
こうした「曲が降ってきた」という感覚は、作曲をする人なら一度くらい経験したことがあるかもしれません。
今回は、この感覚を「天から本当に曲が降りてくる」という意味ではなく、アイデアが自然に浮かびやすくなる心理状態として考えてみたいと思います。
「曲を作らなければ」と思うほど、何も浮かばない
作曲で行き詰まったとき、私がまず感じるのは「考えすぎている」ということ。
「良い曲を作らなければ」「もっと印象的なメロディにしなければ」「この前より良いものを作らなければ」などと考えながら楽器を触っていると、一音鳴らすたびに「これは違う」と判断してしまいます。
これでは、せっかく浮かんだ小さなアイデアまで、自分で消してしまいます。
逆に、目的を決めすぎずに音を鳴らしていると、思いがけないフレーズが出てくることがあります。もちろん、これは「何も考えなければ名曲ができる」という意味ではありません。作曲には知識や技術、経験も必要です。
ただ、考えることと、考えないことの両方が創作には必要なのではないかと私は感じています。

「曲が降りてくる」と感じるとき、何が起きているのか
「曲が降ってきた」という表現は、とても不思議に聞こえます。でも、必ずしも神秘的な現象として考える必要はないと思っています。
普段からたくさんの音楽を聴き、楽器を弾き、メロディを考えていると、自分では意識していないところでも、いろいろな音の経験が積み重なっています。
そして、ふと力が抜けたときに、それまで蓄積していたものが組み合わさって、突然ひとつのアイデアとして意識に浮かんでくる。私はそんなふうに考えると、「曲が降ってくる」という感覚も少し分かりやすくなる気がします。
だから、何もしていないように見える時間も、創作にとって無駄とは限りません。
実際に、眠っているときに曲のアイデアを残したミュージシャンもいる
「無意識のうちに音楽のアイデアが生まれる」という話を考えると、キース・リチャーズの有名なエピソードは興味深いものです。
ローリング・ストーンズの「(I Can’t Get No) Satisfaction」の有名なギターリフについて、リチャーズは眠っている間にアイデアが浮かび、ベッドのそばに置いていたカセットレコーダーに録音していたと語っています。
翌朝、本人は録音したことを覚えておらず、テープを再生して初めてアイデアが残っていることに気づいたそうです。
参考:Guitar World「How Keith Richards wrote the iconic Satisfaction riff」
もちろん、このエピソードだけで「無意識になると名曲が作れる」と結論づけることはできません。ただ、思いついた瞬間に記録しておくことの大切さは、ここから学べると思います。
良いアイデアは、机の前で「さあ作るぞ」と構えたときだけ生まれるとは限りません。だからこそ、思いついたときにすぐ残せるようにしておく。スマートフォンの録音機能でもいいですし、紙にメロディを書いてもいい。
「あとで覚えているだろう」と思わず、その場で記録することが大切です。
作曲でスランプになったら「完成させる」のを一度やめてみる
曲が作れないとき、私は「完成させなければ」と考えすぎないほうがいいと思っています。
例えば、
- 何となくコードを鳴らしてみる
- 思いついたメロディを適当に歌ってみる
- いつも使わない音色を選んでみる
- リズムだけ作ってみる
- 短いフレーズを何度も繰り返してみる
- 楽器を持たずに散歩する
- 何もせず少し休む
こんなことでも構いません。「今日は1曲完成させる」という目標から離れて、「今日は音で遊んでみよう」くらいにすると、気持ちが楽になることがあります。
完成させるための作業と、アイデアを生み出すための時間を、最初から同じものとして考えなくてもいいのです。
同じフレーズを繰り返してみる
もうひとつ私が面白いと思っているのが、同じフレーズを何度も繰り返す方法です。一見すると、同じことを繰り返しているだけに思えます。
でも、何度も同じフレーズを弾いていると、「ここを変えたらどうなるだろう」と自然に変化をつけたくなることがあります。リズムを変えたり、最後の音だけ変える、音を一つ増やす、テンポを変えるなど。
そうやって少しずつ変化させているうちに、最初には考えていなかったメロディが生まれることがあります。
スティーヴ・ヴァイも、作曲の行き詰まりについて、必要以上に心配しないことや、作曲では頭の中に聞こえているものを形にしていくことについて語っています。
参考:Make Weird Music「Steve Vai Interview」
「何か新しいものを思いつかなければ」と焦るより、まず今ある小さなフレーズを動かしてみる。これなら、スランプのときにも試しやすいと思います。
私が「降りてきた」と感じるとき
私自身の場合、良いフレーズが浮かぶのは、必ずしも作曲に集中しているときではありません。むしろ、少しぼんやりしていたり、無心で音を鳴らしていたりするときに、「これだ」と感じることがあります。
そのときは、後から考えると途中のことをあまり覚えていないような感覚になることもあります。
だから私は、「良い曲を作ろう」と頑張り続けるだけではなく、時々、力を抜く時間も必要なのだと思っています。これは私にとっての感覚なので、誰にでも同じように起こるとは思っていません。
でも、もしあなたが今作曲で行き詰まっているなら、一度「作ること」から少し離れてみるのもいいかもしれません。

思いついたアイデアは、良し悪しを判断する前に残しておく
もうひとつ大切なのは、浮かんだアイデアをすぐに評価しないことです。「こんなの大したことない」「どこかで聴いたことがある」「こんな単純なメロディではダメだ」と、その場で判断してしまうと、せっかくのアイデアを捨ててしまうことがあります。
そんな時は、まず録音する。まずメモする。それから後で聴き直す。この順番にしてみるだけでも、アイデアを残しやすくなります。
その場では「微妙だな」と思ったフレーズが、数日後に聴いてみたら意外と良かった、ということもあります。
反対に、当時は最高だと思ったものが、後から聴いたらそうでもなかった、ということもあります。それでいいのだと思います。アイデアを生み出す時間と、アイデアを評価する時間を分けてしまうのです。
作曲のスランプを抜けるための3つのヒント
ここまでの話を、私なりに3つにまとめてみます。
1.「良い曲を作ろう」と力みすぎない
評価される曲を作ろうとすること自体は悪いことではありません。でも、最初から完成度を求めすぎると、小さなアイデアまで否定してしまいます。
まずは音を鳴らして、遊んでみる。そして思いついたものを試して、そこから始めてみてください。
2.アイデアが出ないときは、いったん離れる
机の前で何時間考えても何も出てこないなら、少し離れてみるのも方法です。散歩したり、別の音楽を聴いたり、楽器を触らずに過ごす、または寝てもいいと思います。
一度頭を切り替えることで、戻ってきたときに違うアイデアが浮かぶことがあります。
3.浮かんだら、すぐに記録する
メロディでも歌詞でもリズムでも構いません。「あとで覚えているから大丈夫」と思わず、その場で録音やメモをしておきましょう。
せっかく「降りてきた」と感じたアイデアも、時間が経つと意外なほど簡単に忘れてしまいます。
「曲が降りてくる」の正体は、まだ分からない
「天から曲を受け取る」という表現は、とてもロマンがあります。実際、作曲していると「自分が作ったというより、どこかから来たみたいだ」と感じる瞬間があるのも分かります。
ただ、それが本当にどこかから曲を受信しているのか、それともこれまでの経験や記憶が無意識の中で組み合わさっているのか。そこは、私には分かりません。だからこそ面白いのだと思います。
少なくとも私自身は、作曲で行き詰まったときに、「もっと頑張って考えなければ」と自分を追い込むより、「少し力を抜いて、音と遊んでみよう」と考えるほうが、楽しく作曲できます。

もし今、曲が作れなくて悩んでいるなら、今日は無理に1曲完成させなくてもいいかもしれません。一つの音を鳴らしてみたり、短いフレーズを繰り返す、思いついたメロディを録音してみる。そして、何も浮かばなければ、一度楽器から離れてみる。
そんなところから、また何かが始まることもあります。「曲が降りてくる」という感覚に導かれながら、音楽のみちを一緒に歩んでいきましょう。
もし、もっといろいろなスランプ対処方法などを知りたいという場合は、下記の記事も参考にご覧ください。私が普段している方法についてもお話しています。
この記事が、みなさんの音楽ライフをさらに楽しく、充実につながるきっかけになれば嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました



